ブラームス
①交響曲第4番ホ短調 作品98
②ハイドンの主題による変奏曲 作品56a

指揮：ブルーノ・ワルター
コロンビア交響楽団
録音: 1959年2月①、1960年1月②　ハリウッド

枯淡の境地、寂寥感あふれる表現は誰にもまねできないものであろう作名演。カップリングの「ハイドン変奏曲の主題による変奏曲」も、老巨匠の巧みなスコアリーディングによる各変奏の性格描写が素晴らしい。

ワルター盤は大変平易で、親しみやすい演奏。曲自体は枯れ切った印象ですが演奏には老指揮者の最後の意気込みみたいなものを感じます。コロンビア交響楽団は引退したワルターのために設立された寄せ集めオーケストラですが、指揮者を敬い、その芸術の全てを再現させようという集中力に舌を巻きます。録音がステレオになってワルターの演奏を聴けるのはクラシックファンにとって大きな財産。その中にはいまだに決定盤として支持されるものも少なくないですが、このブラ４はまさにその1枚。カップリングされたハイドンの主題による変奏曲では何気ない音符の一音一音から人間的な温かみが、変奏の節目の息遣いからはいまは失われた真にロマンティックな情感が零れ落ちるように表出する。

いまだに「ああ、ありがたい・・」と胸を熱くし、ふと涙するのがこのワルターの４番です。ロマンの極みでありながら、つねに寂しげ。晩年のワルターの枯淡の境地を映していながら、時おりふっと若い頃の情熱が湧き上がる。不思議な、そして本当にありがたい演奏です。第1楽章の、あの冒頭、すすり泣くような旋律から、聴く者の心はワルターの虜となります。あれよあれよと音楽に身をゆだねているうちに、フィナーレへ。そのコーダ、大団円の直前に大きくテンポが揺れて感情の嵐のなかに連れ去られるまで、聴き手は、ワルターの甘美で、暖かくて、懐の深い大きな音楽にノックアウトされます。わたくしは、数えきれないほど、聴きこんだつもりですが、いつも「いいなあ・・・」と幸福な気持ちで聴き終わります。

国内盤、帯無し、盤面傷無し 4

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